今回は妊娠中の体重管理・食事のよくある質問について答えて行きます。
体重が増えすぎると…微弱陣痛、難産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病になりやすくなります。産後、体型が戻りにくくなります。
妊娠中の太りすぎは良くありませんが、痩せすぎも良くありません。理想的な体重の増加量は一人ひとりの体格や健康状態によって異なります。その指標となるのがBMIです。以下の計算式をもとに妊娠前のBMIを算出してみましょう。
[BMIの計算式]
● BMI = 体重(㎏)÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
※体重は㎏で身長はmで計算する
例)体重50㎏、身長160㎝(1.6m)の場合
BMI = 50 ÷ 1.6 ÷ 1.6 = 19.5
妊娠前の体格 | 妊娠前のBMI | 体重増加の目安 |
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低体重 | 18.5未満 | 12~15㎏ |
普通体重 | 18.5以上25未満 | 10~13㎏ |
肥満(1度) | 25以上30未満 | 7~10㎏ |
肥満(2度以上) | 30以上 | 個別対応 (上限5㎏までが目安) |
お腹に赤ちゃんがいるのだから、たくさん食べなさいと言われます。どのくらい食べたほうが良いですか?
「赤ちゃんがいるから2人分」と倍の量を摂れば良いのかというと、そうではありません。母子手帳に記載されているバランスガイドを参照し、主食や主菜、副菜を1品ずつプラスする程度です。
(1)「主食」を中心にエネルギーをしっかりと
穀主食からのエネルギー摂取を適正に保ちましょう。
(2)からだづくりの基礎となる「主菜」は適量を
魚、肉、卵、大豆製品など色々な種類の食品から、「主菜」を摂るようにしましょう。
「主菜」となる食品には鉄分やカルシウムを多く含むものもあります。
(3)「カルシウム」を十分に摂りましょう
カルシウム摂取不足は腰痛や妊娠高血圧症候群を招くと言われています。
カルシウムが豊富で吸収率も優れているのが、牛乳・乳製品です。
吸収率は牛乳よりも落ちますが、丸ごと食べられる小魚、小松菜などの緑黄色野菜にもカルシウムが含まれています。
(4)貧血を予防しましょう
妊娠により体内の血液量が増加するため、血が薄くなり、貧血になりやすくなります。
〈貧血の影響〉
母体:疲れやすくなる、めまい、頭痛、産後の回復に時間がかかる
胎児:発育不良となり新生児も貧血になることがある
《貧血を予防・改善させるための食事》 ① 鉄分を多く含む食品を摂る 肉類:牛もも肉(赤身)、鶏もも肉(皮なし)、牛・豚・鶏レバー 魚貝類:カツオ、イワシ、ワカサギ、あさり 野菜類:小松菜、ほうれん草、枝豆、切り干し大根、大根の葉 豆類:納豆、厚揚げ、木綿豆腐 ドライフルーツ:プルーン、レーズン ② 動物性の蛋白質をたっぷり摂る 鮭、豚もも肉(赤身)、牛乳、卵、大豆など ③ 鉄の吸収を助けるビタミンCをたっぷり摂る ゴーヤ、柿、キウイフルーツ、いちご、ブロッコリーなど ④ 造血に欠かせないビタミンB2、B6、B12、葉酸を十分摂る 肉類:牛・豚レバー 魚介類:鮭、牡蠣、帆立、あさり、マグロ、サンマ、イワシ、うなぎ 野菜類:菜の花、ブロッコリー 果物:いちご、マンゴー 豆類:大豆、納豆 卵・乳製品 ⑤ 鉄の吸収を良くするため、食事の前後1時間はコーヒー、紅茶、緑茶は控える |
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(5)塩分について
塩のほか味噌や醤油、ソース、加工食品にも多く含まれています。
塩分は1日10g以下が目標です。
≪塩分を控えるための調理の工夫≫
① 素材の持ち味を生かす
② 香味野菜・香辛料を使う
③ だしを効かせる
④ 程よい香ばしさを利用する
⑤ 食べる直前に味付けをする
魚の一部には食物連鎖により水銀濃度が高い種類があります。注意が必要な種類の魚を大量に食べることは避けましょう。
※おなかの赤ちゃんの発育に影響を与える可能性は、目安量よりもとても多く食べた続けた場合です。
≪水銀に注意が必要な魚と量≫ | |
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魚の種類 | 目安量 |
ミナミマグロ(インドマグロ) | 1回1切れ約80gとして、週1回まで(1週間に160g程度) |
キンメダイ、メカジキ、メバチマグロ、クロマグロ(ホンマグロ) | 1回1切れ約80gとして週に1回まで(1週間に80g程度) |
(7)カフェインについて
カフェインの過剰摂取は胎児の成長に影響を与えます。カフェインはコーヒー以外にも緑茶、紅茶、ココア、チョコレート、コーラ、エナジードリンクなどにも含まれています。
≪摂取量の目安≫
コーヒー(1~2杯程度/日)
(8)たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう
妊娠・授乳中の喫煙や受動喫煙、飲酒は、胎児の発育、母乳分泌に影響を与えます。禁煙・禁酒に努め、禁煙は周囲にも協力を求めましょう。
(9)トキソプラズマについて
トキソプラズマの人への感染経路は主に経口感染と母胎感染です。生肉や猫の排泄物、土の中に潜んでいることもあります。胎児が感染した場合、流早産、視力や運動神経などに障害が出るといわれています。
《感染を防ぐためのアドバイス》
① 生肉は必ず火を通して食べる
② 素手での砂場遊びやガーデニングは避ける
③ 果物や野菜の皮は剥くかしっかり洗う
④ ネコの糞を扱ったらしっかり手を洗う
(10)食中毒について
妊娠中は食中毒の菌(リステリア菌)に感染しやすいため、ナチュラルチーズ(加熱殺菌していないもの)、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンは避けるようにしましょう。感染してしまうと、流早産や死産の原因になるといわれています。
(11)その他
過剰摂取によってビタミンAは胎児の奇形、ヒ素は胎児の脳へ障害、ヨウ素は甲状腺機能低下症を引き起こすといわれています。これらが多く含まれる食品の過剰摂取は控えましょう。
≪含有量の多い食品と摂取量の目安≫
ビタミンA…レバー(焼き鳥1本程度/日)、うなぎ(1回程度/週)
ヒ素…………ひじき(小鉢1つ程度/日)
ヨウ素………昆布(頻繁に食べている場合は頻度を減らす